点火波形の基本的な観方について
点火二次波形各部の名称と意味合い

*自動車工学実践基礎シリーズ・2 P49より引用*
図中①~③について、それぞれの名称は、①点火要求電圧②スパークライン③減衰部と呼ばれています。
①要求電圧は、最初、混合気に電気路を作るために容量成分が放電されるもので、これによりイオン化された電気路が出来上がります。

*二級ガソリン・エンジン編より引用*
よく誤解されますが、この要求電圧そのものが火炎核を形成するのではなく、あくまでも次に点火エネルギーを注入するために放電されるスパークラインの電気路を作るものと考えることが妥当です。スパークプラグの中心接地両電極間に火花を飛ばすために高電圧(10KV以上)となりますが、その放電時間は非常に短く、これだけでは混合気を燃焼させることは出来ません。
②スパークラインは、点火要求電圧によって作られた電気路を通って点火エネルギーを注入し、初期火炎核を形成する誘導成分の電流で、比較的低い電圧の放電となっています。エンジン回転数にもよりますが、このスパークラインの中心部より少し前では既に火炎核は形成されており、スパークラインの放電が終わるころには火炎核から火炎伝播へとつながります。
小さな火種である火炎核をより良い火種として育てるためには、このスパークラインの役割は決して小さなものではありません。点火波形観測にとって非常に大切な部分であり、この部分の読み取りがトラブル解消のミソと言えるでしょう。
③減衰部は、残存したエネルギーがしだいに減少し、消滅していく状態をあらわしていて、図のように上下に波打った形になるのは、コイルとコンデンサの電気振動によるものです。コイルはもちろん、イグニションコイルのことをさしますが、ここで言うところのコンデンサとは、コイルの巻き線間やハイテンションコードの静電容量のことをさします。よって現在のようにハイテンションコードを用いないことの多い点火システムの波形では、この減衰部は以前のものより波の数は少なくなっています。比較参考のため、ディストリビュータ式点火システムの点火二次波形を掲載しておきます。(下図〇部)

先のスパークプラグセミナーの実習において、「コイルがアカンようになると、この減衰部が無くなるんやわ。何でか知らんけど」と言っていた若い整備士が居りましたが、それはこの減衰部に、コイルとコンデンサによる電荷の往復が引き起こす電気振動が関わっているからに他なりません。
ただし、イグニションコイルの不良は短絡(ショート)や断線(オープン)に限ったことではなく、本体よりの漏電(リーク)も考えられます。そのような場合は、減衰部ではなくスパークラインに現れることが多いので、過去の故障事例の波形を掲載します。

*レガシィ 点火一次波形*

*ボルボ 点火二次波形*
「あれ、最後のボルボの点火二次波形、おかしいで。いつもイグニションアナライザで観る波形と違う。ひっくり返ってるやん。何でや?」と思われた方、その感性は優れています。そのことについては、また次回以降に。
authorized by 浅田 純一

*自動車工学実践基礎シリーズ・2 P49より引用*
図中①~③について、それぞれの名称は、①点火要求電圧②スパークライン③減衰部と呼ばれています。
①要求電圧は、最初、混合気に電気路を作るために容量成分が放電されるもので、これによりイオン化された電気路が出来上がります。

*二級ガソリン・エンジン編より引用*
よく誤解されますが、この要求電圧そのものが火炎核を形成するのではなく、あくまでも次に点火エネルギーを注入するために放電されるスパークラインの電気路を作るものと考えることが妥当です。スパークプラグの中心接地両電極間に火花を飛ばすために高電圧(10KV以上)となりますが、その放電時間は非常に短く、これだけでは混合気を燃焼させることは出来ません。
②スパークラインは、点火要求電圧によって作られた電気路を通って点火エネルギーを注入し、初期火炎核を形成する誘導成分の電流で、比較的低い電圧の放電となっています。エンジン回転数にもよりますが、このスパークラインの中心部より少し前では既に火炎核は形成されており、スパークラインの放電が終わるころには火炎核から火炎伝播へとつながります。
小さな火種である火炎核をより良い火種として育てるためには、このスパークラインの役割は決して小さなものではありません。点火波形観測にとって非常に大切な部分であり、この部分の読み取りがトラブル解消のミソと言えるでしょう。
③減衰部は、残存したエネルギーがしだいに減少し、消滅していく状態をあらわしていて、図のように上下に波打った形になるのは、コイルとコンデンサの電気振動によるものです。コイルはもちろん、イグニションコイルのことをさしますが、ここで言うところのコンデンサとは、コイルの巻き線間やハイテンションコードの静電容量のことをさします。よって現在のようにハイテンションコードを用いないことの多い点火システムの波形では、この減衰部は以前のものより波の数は少なくなっています。比較参考のため、ディストリビュータ式点火システムの点火二次波形を掲載しておきます。(下図〇部)

先のスパークプラグセミナーの実習において、「コイルがアカンようになると、この減衰部が無くなるんやわ。何でか知らんけど」と言っていた若い整備士が居りましたが、それはこの減衰部に、コイルとコンデンサによる電荷の往復が引き起こす電気振動が関わっているからに他なりません。
ただし、イグニションコイルの不良は短絡(ショート)や断線(オープン)に限ったことではなく、本体よりの漏電(リーク)も考えられます。そのような場合は、減衰部ではなくスパークラインに現れることが多いので、過去の故障事例の波形を掲載します。

*レガシィ 点火一次波形*

*ボルボ 点火二次波形*
「あれ、最後のボルボの点火二次波形、おかしいで。いつもイグニションアナライザで観る波形と違う。ひっくり返ってるやん。何でや?」と思われた方、その感性は優れています。そのことについては、また次回以降に。
authorized by 浅田 純一
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