オシロ以前 パートⅡ
JAFの出張サービス依頼でも常に上位を占めるのが、バッテリ上がりによるエンジン始動不能ですが、その始動不能の原因がバッテリにあるのか、それともスタータ本体や配線にあるのか、その異常箇所の特定が必要です。
出張には、サーキットテスタを持って行くのは当たり前ですが、そういう当たり前のこともしていない修理屋が意外にも多いようです。もっと酷いのになると、サーキットテスタを備えていないという整備工場さえあります。「えっ、ウソやろ?」と思われるかも知れませんが、事実、そういう工場にテスタをプレゼントしていますから、ウソではありません。
ユーザーのみなさんには、一応、機器がどれほど揃っているのかを吟味していただきたいものです。概ね、こういった整備工場は、機器の不揃いに比例して技術力も劣る傾向にあり、腹立たしいのは、そういった所と値段で比べるユーザーに捨て台詞を浴びせられることです。ユーザーは店を選んでいるつもりかも知れませんが、多くのちゃんとした整備工場は、良いお客さんを選んでいることを忘れないで欲しいものです。これは決して不遜ではありません。生き残るための”正しい選別”です。
タイトルを”オシロ以前”と付けていますが、これは技術的な問題だけではなく、機器の取り揃えに関することでもあります。その点、八尾柏原地区会では高価な診断機器を会として複数所有し、それを会員に無償貸し出ししています。一軒では出来ないことも、沢山の仲間がいれば可能になります。
さて、本題に戻ります。始動不能の原因追及ですが、始動不能とは言っても様々な原因がありますから、今回はバッテリ周りに関するものであることを前提にしています。
エンジンがかからないということで駆けつけた時、あれこれと手をつける前に、まず、バッテリの起電力は診ることでしょう。その時、起電力が10.5Vなどに下がっていればバッテリの劣化を疑いますが、起電力が正常な場合でも、いきなりブースターケーブルをつないで始動させようとする人が居ますが、それは間違いです(絶対に選んだらアカンやつやから、映す価値なしで画面から消えてまいます)。
下の表は、また実践基礎シリーズ・1からの引用ですが、覚えておくと便利です。表にあるバッテリ電圧は起電力ではなく、電気負荷をかけた際の端子電圧です。

表にあるバッテリ電圧・スタータ電流ともに低い場合は、典型的なバッテリ不良です。スタータ電流の測定にはクランプメータを使用します。無闇にバッテリケーブルを取り外すと、故障原因が判らなくなることがあるので注意が必要です。
次の段のバッテリ端子電圧が通常より高くスタータ電流が低すぎる場合、これはスタータの駆動電流が小さいので、バッテリの電圧降下も小さいということです。通常、10.何某V以下に降下する端子電圧が12Vや11Vのような時が、こういう事例にあたります。配線や接触不良に問題がある可能性が高いので、その辺をしっかりと点検しましょう。無闇にバッテリケーブルを取り外してはいけないというのは、こういうことが考えられるからです。
そして最後の段、バッテリ電圧が低すぎてスタータ電流が高すぎる場合、スタータ本体の不良が考えられます。スタータを駆動させようと、大電流が流れ続けるためにそういう数値が計測されます。
下の図は、上下それぞれ、クランキング時の放電電流をオシロスコープで観測したものです。上:バッテリ交換前 下:バッテリ交換後

*自動車工学 平成12年9月号 整備日誌アラカルトより引用*
エンジンスタータを始動させた直後に非常に大きな電流が流れ、スターターモータ始動に連れて少しずつ電流値が小さくなっている様子がわかります。スタータ不良でモータが回らないままだと、大きな電流が流れ続けてしまうということが、この波形からも推測できますね。
バッテリの端子電圧はまあ解るとして、スタータ電流がどれくらいなのかは車種により違いますから、それは把握しておく必要があります。平成10年頃までの数値なので現在の自動車に適合するのかどうかは定かではありませんが、一応、排気量別の表を掲載しておきます。

今の自動車でも調べてみたいのですが、オカシナことをするとメータ内やあちこちの警告灯が点灯すると面倒なので、実験はしていません。どなたか勇気のある方、是非、試してみてください。それが原因で故障を誘発しても、当局は一切関知しないからそのつもりで。成功を祈る。
authorized by 浅田 純一
スパイ大作戦
出張には、サーキットテスタを持って行くのは当たり前ですが、そういう当たり前のこともしていない修理屋が意外にも多いようです。もっと酷いのになると、サーキットテスタを備えていないという整備工場さえあります。「えっ、ウソやろ?」と思われるかも知れませんが、事実、そういう工場にテスタをプレゼントしていますから、ウソではありません。
ユーザーのみなさんには、一応、機器がどれほど揃っているのかを吟味していただきたいものです。概ね、こういった整備工場は、機器の不揃いに比例して技術力も劣る傾向にあり、腹立たしいのは、そういった所と値段で比べるユーザーに捨て台詞を浴びせられることです。ユーザーは店を選んでいるつもりかも知れませんが、多くのちゃんとした整備工場は、良いお客さんを選んでいることを忘れないで欲しいものです。これは決して不遜ではありません。生き残るための”正しい選別”です。
タイトルを”オシロ以前”と付けていますが、これは技術的な問題だけではなく、機器の取り揃えに関することでもあります。その点、八尾柏原地区会では高価な診断機器を会として複数所有し、それを会員に無償貸し出ししています。一軒では出来ないことも、沢山の仲間がいれば可能になります。
さて、本題に戻ります。始動不能の原因追及ですが、始動不能とは言っても様々な原因がありますから、今回はバッテリ周りに関するものであることを前提にしています。
エンジンがかからないということで駆けつけた時、あれこれと手をつける前に、まず、バッテリの起電力は診ることでしょう。その時、起電力が10.5Vなどに下がっていればバッテリの劣化を疑いますが、起電力が正常な場合でも、いきなりブースターケーブルをつないで始動させようとする人が居ますが、それは間違いです(絶対に選んだらアカンやつやから、映す価値なしで画面から消えてまいます)。
下の表は、また実践基礎シリーズ・1からの引用ですが、覚えておくと便利です。表にあるバッテリ電圧は起電力ではなく、電気負荷をかけた際の端子電圧です。

表にあるバッテリ電圧・スタータ電流ともに低い場合は、典型的なバッテリ不良です。スタータ電流の測定にはクランプメータを使用します。無闇にバッテリケーブルを取り外すと、故障原因が判らなくなることがあるので注意が必要です。
次の段のバッテリ端子電圧が通常より高くスタータ電流が低すぎる場合、これはスタータの駆動電流が小さいので、バッテリの電圧降下も小さいということです。通常、10.何某V以下に降下する端子電圧が12Vや11Vのような時が、こういう事例にあたります。配線や接触不良に問題がある可能性が高いので、その辺をしっかりと点検しましょう。無闇にバッテリケーブルを取り外してはいけないというのは、こういうことが考えられるからです。
そして最後の段、バッテリ電圧が低すぎてスタータ電流が高すぎる場合、スタータ本体の不良が考えられます。スタータを駆動させようと、大電流が流れ続けるためにそういう数値が計測されます。
下の図は、上下それぞれ、クランキング時の放電電流をオシロスコープで観測したものです。上:バッテリ交換前 下:バッテリ交換後

*自動車工学 平成12年9月号 整備日誌アラカルトより引用*
エンジンスタータを始動させた直後に非常に大きな電流が流れ、スターターモータ始動に連れて少しずつ電流値が小さくなっている様子がわかります。スタータ不良でモータが回らないままだと、大きな電流が流れ続けてしまうということが、この波形からも推測できますね。
バッテリの端子電圧はまあ解るとして、スタータ電流がどれくらいなのかは車種により違いますから、それは把握しておく必要があります。平成10年頃までの数値なので現在の自動車に適合するのかどうかは定かではありませんが、一応、排気量別の表を掲載しておきます。

今の自動車でも調べてみたいのですが、オカシナことをするとメータ内やあちこちの警告灯が点灯すると面倒なので、実験はしていません。どなたか勇気のある方、是非、試してみてください。それが原因で故障を誘発しても、当局は一切関知しないからそのつもりで。成功を祈る。
authorized by 浅田 純一
スパイ大作戦
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