調べてみることの意義
最近では、時間をかけて自分で診断せずに、みんカラなどを見て故障箇所を見つけ出すことも多いようですが、故障箇所が判ったとして、その部品を交換して直ったと喜んでいるようでは進歩がありません。プロとしては、もう一歩踏み込んだ考察をしておくべきかと思います。
今回の事例も、みんカラに同様のトラブル事例として掲載されているようですが、折角のおもしろい事例であり、また勉強になる要素が含まれているので記事にすることにしました。もちろん、上級者向けではありませんので、「そんなもん、どこが悪いかぐらいわかっとるわい
」という方は、ここで終了!

ダイハツ・ムーブ(L152S)で、エンジン始動後もABSウォーニングランプならびにブレーキウォーニングランプが点灯し、10km/時で少し走行すれば消灯し再点灯はないものの、次の始動時には同じように二つの警告灯が点灯するというものです。走り出せば消灯する、この繰り返しです。
手順通りにスキャンツールを用いて自己診断機能で点検しましたが、異常コードは入力されていません。積極的にコードの入る点検も行い、走行テストでも各車輪速センサ信号は正常に入出力されています。段々と、点検箇所は絞られてきます。
「何や、みんカラやったら、もう正解は出とるぞ」という声も聞こえてくる、つなぎを着た修理屋のなんと饒舌なことでしょうか。
配線図でのABSコンピュータの30番端子と19番端子の電圧変化を点検すると、キーON時(パーキングブレーキON)では、各々8.7V、エンジンをスタートさせても消灯しないので同じ電圧です。*なお、年式と形式の違いにより、この電圧が7.7Vと計測されるものがあります*
そこで、異常コードは入力されていないものの、コード消去をしてみると、ABS警告灯は消灯し、同時に30番端子はアースされますが、この時の電圧は0Vではなく約0.6Vです。この電圧が、アースされるのに何故0Vではなく、約0.6Vなのか?ということを考えることが、とても楽しい(かどうかは主観の問題)のですよ。

19番端子はまだ8.7Vですが、パーキングブレーキを解除すれば約0.6Vに変化します。

キーをOFFにし、再度エンジンを始動させると、各々の端子は8.7Vのまま、少し走り消灯した後は、それぞれ約0.6Vに変化します(パーキングブレーキ解除時)。
ここまで点検してはじめて、ABSコンピュータのイニシャルチェックに問題があることに確信が持てます。ここまで診て、ようやくABSコンピュータの不良と診断できるのですが、「多分、コンピュータがアカンのやで」というヤマカンや、みんカラを見て直したということでは、到底、診断料の請求は出来ません。
整備工場によってはチャンとした仕事をしているにも関わらず、その診断料を請求できていない所もあるようですが、時間をかけて故障箇所を見つけ出したのに部品が高価なために直すのをやめておくというような場合でも、処置料とは別に頂くべきものは頂くという姿勢を通さなくてはなりません。プロとしての診断は、価値ある仕事であるということを訴えつづけない限り、我々の地位はいつまでたっても向上しません。
ヤブ医者でも貰えるあの”診察料”が、我々の診断料に匹敵するのに、それを無為にしてはならないということを胸に刻んで欲しいものです。
authorized by 浅田 純一
ジェットストリーム
今回の事例も、みんカラに同様のトラブル事例として掲載されているようですが、折角のおもしろい事例であり、また勉強になる要素が含まれているので記事にすることにしました。もちろん、上級者向けではありませんので、「そんなもん、どこが悪いかぐらいわかっとるわい


ダイハツ・ムーブ(L152S)で、エンジン始動後もABSウォーニングランプならびにブレーキウォーニングランプが点灯し、10km/時で少し走行すれば消灯し再点灯はないものの、次の始動時には同じように二つの警告灯が点灯するというものです。走り出せば消灯する、この繰り返しです。
手順通りにスキャンツールを用いて自己診断機能で点検しましたが、異常コードは入力されていません。積極的にコードの入る点検も行い、走行テストでも各車輪速センサ信号は正常に入出力されています。段々と、点検箇所は絞られてきます。
「何や、みんカラやったら、もう正解は出とるぞ」という声も聞こえてくる、つなぎを着た修理屋のなんと饒舌なことでしょうか。
配線図でのABSコンピュータの30番端子と19番端子の電圧変化を点検すると、キーON時(パーキングブレーキON)では、各々8.7V、エンジンをスタートさせても消灯しないので同じ電圧です。*なお、年式と形式の違いにより、この電圧が7.7Vと計測されるものがあります*
そこで、異常コードは入力されていないものの、コード消去をしてみると、ABS警告灯は消灯し、同時に30番端子はアースされますが、この時の電圧は0Vではなく約0.6Vです。この電圧が、アースされるのに何故0Vではなく、約0.6Vなのか?ということを考えることが、とても楽しい(かどうかは主観の問題)のですよ。

19番端子はまだ8.7Vですが、パーキングブレーキを解除すれば約0.6Vに変化します。

キーをOFFにし、再度エンジンを始動させると、各々の端子は8.7Vのまま、少し走り消灯した後は、それぞれ約0.6Vに変化します(パーキングブレーキ解除時)。
ここまで点検してはじめて、ABSコンピュータのイニシャルチェックに問題があることに確信が持てます。ここまで診て、ようやくABSコンピュータの不良と診断できるのですが、「多分、コンピュータがアカンのやで」というヤマカンや、みんカラを見て直したということでは、到底、診断料の請求は出来ません。
整備工場によってはチャンとした仕事をしているにも関わらず、その診断料を請求できていない所もあるようですが、時間をかけて故障箇所を見つけ出したのに部品が高価なために直すのをやめておくというような場合でも、処置料とは別に頂くべきものは頂くという姿勢を通さなくてはなりません。プロとしての診断は、価値ある仕事であるということを訴えつづけない限り、我々の地位はいつまでたっても向上しません。
ヤブ医者でも貰えるあの”診察料”が、我々の診断料に匹敵するのに、それを無為にしてはならないということを胸に刻んで欲しいものです。
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